むちうち

「むちうち」は、一般的に使われる俗称で、医学的な正式病名は「外傷性頸部症候群（がいしょうせいけいぶしょうこうぐん）」あるいは「頸椎捻挫（けいついねんざ）」と呼ばれます。

主な原因は自動車の追突事故ですが、その他にもスポーツでの衝突（ラグビー、柔道など）や、日常生活での転倒、強く頭をぶつけることでも発症します。
その名の通り、外部からの強い衝撃によって頭部が鞭（むち）のようにしなり、首が強制的に過度な屈曲と伸展を強いられることで、首の筋肉、靭帯、関節包（かんせつほう）、神経といった軟部組織が損傷を受けた状態の総称です。

むちうちの最も注意すべき特徴の一つが、「症状の遅発性（ちはつせい）」です。
事故直後は、脳が興奮状態（アドレナリンなどが分泌）にあるため、痛みを感じにくいことがあります。
しかし、数時間後から翌日、あるいは2〜3日経過してから、損傷部位の炎症がピークに達し、「首が回らない」「頭痛がひどい」「吐き気がする」といった多様な症状が出現することが非常に多いのです。
この「タイムラグ」こそが、むちうち対応の落とし穴となります。

むちうち治療の第一歩は、整形外科（病院）でのX線（レントゲン）撮影です。
これは、骨折や脱臼といった重篤な骨の異常がないかを確認するために必須の検査です。
しかし、ここで「骨に異常なし」と診断されると、患者様は「異常がないのに、なぜこんなに痛いのか？」と強い不安を感じることがあります。
ここに、むちうち治療の大きな課題である「画像所見と自覚症状のギャップ」が存在します。
なぜなら、むちうちの痛みの主たる原因は、X線には写らない筋肉、靭帯、神経、椎間板といった「軟部組織」の微細な損傷にあるからです。

この「診断のギャップ」を埋め、痛みの客観的な証拠を見つけるために非常に重要なのが、MRI（磁気共鳴画像）検査です。

医学的証拠として（原因の特定）

MRIは、X線では不可能な軟部組織（椎間板、靭帯、神経、脊髄）の状態を詳細に描出できます。
これにより、神経根症状型や脊髄症状型における神経圧迫の有無、あるいは椎間板の損傷（ヘルニア）といった、痛みやしびれの客観的な原因を特定できる可能性があります。

法的証拠として（後遺障害認定）

これは保険実務において非常に重要です。
治療が長引いた場合や、不幸にも症状が残り「後遺障害等級」の認定を申請する場合、「痛い」「しびれる」という患者様の主観的な訴えだけでは、法的な証明として不十分な場合があります。
MRIによって神経の圧迫や脊髄の損傷といった「客観的な異常所見」が画像として提示されて初めて、その症状が医学的・法的に証明され、正当な補償や認定につながる可能性が高まるのです。
X線で「異常なし」と診断されても、しびれや強い痛みが続く患者様には、MRI検査の重要性を説明し、医師に相談するよう指導することも、我々専門家の重要な役割です。

受傷直後の急性期（炎症期）に適切な処置（安静・冷却）を怠ると、損傷した組織が異常な状態で修復・瘢痕化（はんこんか：硬くなること）してしまうことがあります。
その結果、筋肉の過度な緊張や血流不全が常態化し、頭痛、肩こり、めまい、しびれ、倦怠感といった症状が慢性化し、数ヶ月、場合によっては数年単位で続く「後遺症」として残ってしまうリスクが著しく高まります。

むちうち治療、特に交通事故の場合は、法的な側面も無視できません。
事故発生から初回の医療機関受診までに時間が空きすぎると、保険会社などから「その症状は、本当に今回の事故が原因ですか？」と、事故と症状の「因果関係」を疑われる可能性があります。
事故から1週間以上経過して初めて受診した場合、事故との関連性を医学的に証明することが著しく困難になる傾向があります。
症状が軽い、あるいは無症状であっても、事故に遭ったらまずは速やかに（遅くとも数日以内に）整形外科を受診し、医師の診断を受けることが、ご自身の身体を守り、かつ法的な権利（適切な補償）を守るために絶対不可欠です。

むちうちの中で最も多く、全体の約7〜8割を占めるとされます。
首を支える筋肉や靭帯、関節包が引き伸ばされ、微細な断裂を起こした状態です。

主な症状

首、肩、背中の痛み、こわばり、圧痛、可動域制限（首が回らない）が主で、腕や手へのしびれ（神経症状）は伴いません。

事故の衝撃で椎間板（クッション材）が膨らんだり、組織が腫れたりして、脊髄から分岐する「神経根（しんけいこん）」が圧迫または刺激される状態です。

主な症状

首の痛みに加え、圧迫されている神経の支配領域（主に片側の腕や手指）への放散痛、しびれ、感覚異常、筋力低下（握力が入りにくい）などが現れます。

むちうち治療を複雑にするタイプです。
首の損傷が、首の前を通る交感神経（自律神経）を刺激することで、自律神経系のバランスが失調します。

主な症状

首の痛みは比較的軽くても、頭痛（特に後頭部）、めまい、耳鳴り、吐き気、眼精疲労、全身の倦怠感、集中力低下など、多彩な不定愁訴が出現します。
病院の検査で「異常なし」とされやすいのも特徴です。

最も重篤で、緊急性を要するタイプです。
中枢神経である「脊髄」そのものが損傷を受けた状態です。

主な症状

両手足のしびれ、ボタンがかけにくいなどの巧緻運動障害（手指の細かい動きが困難）、脚がもつれる歩行障害、頻尿や尿失禁などの排泄障害。

【重要：レッドフラッグ】

上記の「脊髄症状型」が一つでも疑われる場合、整骨院での施術は絶対禁忌です。
不可逆的な麻痺につながるリスクがあり、直ちに脊椎専門医（整形外科・脳神経外科）への緊急紹介が必要です。
当院では、これらの重篤な症状を見逃さないための鑑別（見極め）を徹底しています。

むちうち治療をしても改善しない難治性の症状、特にバレ・リュー症候群と症状が酷似し、見逃されやすい病態に「脳脊髄液減少症（低髄液圧症候群）」があります。
これは、交通事故などの強い衝撃で脊髄を覆う硬膜に微小な穴が生じ、そこから脳脊髄液（髄液）が漏れ出すことで、多彩な症状を引き起こす病態です。
典型的な症状は「起立性頭痛」（横になると楽になり、起き上がると数分で頭痛が悪化する）とされますが、外傷性の場合はこの典型的な症状を示さないこともあります。頭痛、めまい、吐き気、極度の倦怠感などが続く場合、この病態も考慮し、専門医（ブラッドパッチ治療 などを行える病院）への紹介を検討する必要があります。

当院の施術哲学は、その場しのぎの対症療法ではなく、「根本改善」と「再発予防」にあります。
むちうちによって引き起こされた「痛み」を取り除くだけでなく、なぜ痛みが長引いているのか、その根本原因（例：骨格の歪み、筋力低下、生活習慣）までを追求します。

その中核となるのが、全国のゼロスポグループで年間約5万人の患者様から支持されるオリジナル施術「ゼロ整体」です。
これは、身体にかかる負担をゼロの状態に近づけ、人間が本来持つ自然治癒力を最大限に引き出すことを目的とした施術法です。
事故の衝撃で崩れた身体のバランスを整え、痛みをぶり返さないための土台作りまでを、私たちが責任を持ってサポートします。

当院では、手技療法と最新の物理療法機器を組み合わせ、患者様の症状と時期（フェーズ）に合わせた最適な「オーダーメイド施術」を行います。

ハイボルト

むちうちの痛みの原因は、レントゲンには写らない深層部の筋肉や神経に隠れていることが多いです。
当院では「ハイボルト」 という特殊な電気治療器を用い、痛みの根本原因となっている深層組織を特定（検査）します。
さらに、高電圧の刺激が組織の修復を促進し、炎症を強力に抑制するため、急性の強い痛みやしびれの鎮静化にも高い効果を発揮します。

ゼロ整体

事故の衝撃は、首だけでなく、土台となる骨盤や背骨にも歪みを生じさせます。
この歪みが残ったままだと、首への負担が増え続け、回復を妨げる原因となります。
当院独自の「ゼロ整体」 は、身体全体のバランスを整える施術です。
必要に応じて、身体への負担が少ない矯正専用の「トムソンベッド」 を使用し、ボキボキしない安全な方法で骨格を正しい位置へと導きます。

鍼灸施術

頭痛、めまい、吐き気、不眠といった「バレ・リュー症候群」 の症状には、鍼灸施術が非常に有効です。
鍼や灸で特定のツボを刺激し、硬直した筋肉を深部から緩め、血流を促進します。
これにより、興奮状態にある交感神経の働きを鎮め、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。

EMS（楽トレ）

むちうちの回復期や慢性期において重要なのが「リハビリ」です。
特に、首や体幹を支える「インナーマッスル」が弱っていると、首が不安定になり、症状が再発しやすくなります。
当院ではEMS「楽トレ」 を導入しており、寝たままの状態で効率的にインナーマッスルを鍛えることができます。
30分間で約9000回の筋収縮を促し、コルセットの役割を果たす強い身体の土台を作り、再発を予防します。

むちうち治療にかかる費用は、原因（交通事故か、日常生活か）によって適用される保険が異なります。

1. 交通事故（自賠責保険）の場合

交通事故による「むちうち」の治療は、加害者の「自賠責保険」が適用されます。
この場合、患者様の窓口負担は原則0円です。
施術費、交通費、休業損害などが補償の対象となります。
当院は自賠責保険の取り扱い認定院ですので、安心してご相談ください。

2. 日常生活・スポーツでの受傷（健康保険）の場合

スポーツ（スキー、柔道など）や日常生活（転倒、寝違えなど）で首を痛めた場合、「いつ・どこで・どうして痛めた」という原因が明確な急性の外傷であれば、健康保険の適用対象となります。

保険施術料金（目安）

・初回
約1,500円〜2,500円（初検料＋施術料）

・2回目以降
約500円〜1,000円
（※負担割合、施術部位数により変動します）

3. 根本改善を目指す自費（自由診療）メニュー

健康保険が適用されるのは、法律で定められた範囲（電気、温熱、軽度の手技など）に限られます。
長引く痛みやしびれ、めまいなどの根本的な改善を目指す場合や、慢性的な症状 に対しては、保険外の自費施術を組み合わせることを推奨しています。

・ゼロ整体
3,300円〜4,840円

・鍼灸
3,300円〜4,840円

・ハイボルト（HV）
1,780円〜3,300円

・EMS（楽トレ）
4,400円

※各種自費メニュー学生割引あります。
詳しくはお問い合わせください。

初回料金（根本改善プランの目安）

特別キャンペーンとして初回1,980円（税込）！
詳しくはこちら
※この料金には、詳細なカウンセリング、原因分析、および個別プランの策定を含む「包括的な施術パッケージ」の費用が含まれます。

適用される保険

自賠責保険 （または任意保険）

窓口負担

原則0円

当院の役割

保険会社との手続き代行・サポート

適用される保険

健康保険

窓口負担

1割〜3割負担

当院の役割

適用範囲内での施術

適用される保険

適用外

窓口負担

全額自費負担

当院の役割

自費施術（ゼロ整体、鍼灸など）

むちうちの症状は首だけに留まらないことが多々あります。
当院では以下の関連施術も組み合わせて、全身のバランスを整えます。

鍼灸施術

めまい、吐き気、不眠など自律神経系の症状が強い方。

EMS（楽トレ）

痛みが落ち着いた後のリハビリ、再発予防をしたい方。

骨盤矯正（ゼロ整体・トムソンベッド）

事故の衝撃で身体全体の歪みが気になる方。

この時期の目的は「炎症の最小化」と「損傷の拡大防止」です。
この時期、我々施術家の専門技術である「手技」や「温熱」は厳格な禁忌となります。

やるべきこと

安静 (Rest)

頸椎カラーなどを用いて首を固定し、患部への負担を最小限にします。

冷却 (Ice)

炎症と腫れを抑え、痛みを鎮静させるため、患部をアイシングします。

医療機関受診

最優先事項です。
直ちに整形外科を受診し、医師の診断を受けてください。

やってはいけないこと

以下の行為は炎症を著しく悪化させるため、絶対に避けてください。

温める（入浴、温湿布）

血管を拡張させ、炎症物質が周囲に拡散し、腫れや痛みを悪化させます。
受傷後2〜3日は湯船に浸からず、シャワーで済ませるよう指導します。

マッサージ・ストレッチ

損傷した組織（傷口）を無理に揉んだり、伸ばしたりする行為です。
組織の損傷をさらに拡大させ、回復を大幅に遅らせる危険な行為です。

飲酒（アルコール摂取）

温める行為と同様に血行を促進し、炎症を悪化させます。

炎症のピークが過ぎ、損傷した組織の修復が始まる時期です。
医師や我々施術家の指導のもと、「安静」から「徐々に動かす」フェーズへと移行します。

やるべきこと

物理療法・手技療法

当院での電気療法や穏やかな手技療法（マッサージ）を開始し、硬直した筋肉をほぐします。

温熱療法

アイシングから「温める」ケアに切り替えます。
患部を温めて血流を促進し、組織の修復を助けます。

穏やかなストレッチ

痛みを感じない、心地よい範囲で、首や肩甲骨周りの筋肉をゆっくりと動かし、可動域を広げていきます。

肩甲骨ストレッチ

椅子に座り、両手を肩に乗せます。
肘で大きな円を描くように、「前から後ろへ」5回、「後ろから前へ」5回、ゆっくり回します。

むちうちの回復を妨げ、症状を慢性化させる現代特有の最大の要因が「スマホ首（ストレートネック）」です。
本来、首の骨（頸椎）は前方にカーブ（前弯）しており、このカーブが重い頭（体重の約10%）を支えるバネの役割を果たしています。
しかし、長時間のスマホやPC作業による「うつむき姿勢」は、このカーブを消失させ、首の筋肉や椎間板に常に過剰な負担をかけ続けます。
この状態でむちうちを受傷すると、衝撃吸収機構が働かないため、より深刻なダメージを受けやすくなります。

また、治療中もうつむき姿勢を続ければ、傷口を毎日引き伸ばしているようなもので、回復が著しく遅れます。
むちうちの治療・再発予防には、患部へのアプローチと同時に、以下の姿勢改善（ストレートネック対策）が不可欠です。

スマホは目の高さで

スマートフォンを目線の高さまで持ち上げ、首を下に傾ける時間を減らします。

30分ルール

30分以上同じ姿勢を続けないよう、こまめに立ち上がり、軽く首や肩を動かします。

タオル枕ストレッチ

バスタオルを丸めて首の後ろ（アーチ部分）に敷き、仰向けで数分リラックスします。
頸椎の自然なカーブをサポートします。